仮想鋼鉄 二次創作「ある大学生の敗北」

 

カクヨムさんの自主企画(主催:朽木 奏さま)に参加しました。
華や式さまに仮想鋼鉄の二次短編を書いて頂きました。ありがとうございます。


凄くうれしいです。私が書いたものよりも、仮想鋼鉄の世界観にピッタリと思います。
ことみさんの生意気だけど、チームで絶対勝ちに行く、そんな強い気持ちが出ているのもいいです。
重課金チーム、こう書けばいいんだと気づかされました。
私ではきっと書けない、仮想鋼鉄のもうひとつの可能性を広げてくれた作品です。

仮想鋼鉄 二次創作「ある大学生の敗北」

華や式さま

Sesssion ended.
Session Recode ::No.0a12d3ewei120n
Winner : team rabibt's killer"
Point : 1,500,012pt added.
Accounting :1000 Jp-yen.
Congratulations. It was a wonderful fight !
We are looking forward to your participation.

       Virtual Real Steel Administration Committee.

「ふぁぁ、何とか勝ったぁ」

少女は12インチタブレットを握りしめたまま立ちすくんだ。
夜の公園。見える範囲の周りには息を切らした30代の男性4人。今日の対戦相手だ。
「こんな至近戦、初めて」
にっこりと微笑む少女に、悔しそうに笑う対戦相手たち。
「ま、こんだけ課金してればね……」
少女はそういいつつ、ガレージ画面で自分の機体を眺める。
課金に課金を重ねて買い取った、最高のマシン。
「仮想鋼鉄」史上、もっとも優秀とされるリリースマシンを、優秀な各スペックアップパーツをつぎ込んで完成させた、厨機体。
「 XR012-E2"閃電"ていうんですか?」
悔しそうな男性の顔に、少女は投げキッスを返して。
「悔しかったら、もう少し課金額を増やすことですね」
にこやかに、毒を吐く。

ここ最近、大学の周りでもよくやる人が増えているゲームがある。
仮想鋼鉄。正式名称「array of eXtended Reality Steel doll fight procedures」と呼ばれる複合仮想現実処理技術を駆使したゲームだ。
ゲームの特徴は、タップやコントローラーで操作するのではなく、ある程度動くのが必要なこと。そりゃARゲームだからね。動かないと勝てないし楽しくない。
だけど、このゲームの最大の勝因は「課金額」だ。
私こと、初山ことみのようなブルジョワ大学生でもなければ、大学生はまともに勝つことすらできないだろう。

私の愛用の機体は「 XR012-E2"閃電"」と呼ばれる機体。わざわざコードネームにも課金して作り上げた、最強の愛機。
白と黄色に塗装された、軽量級のマシンを高額課金アイテム「アラートアーマー」で急所を覆った機体で、適度な防御力と抜群の機動性を持った機体だ。
私、体操部だから動くのも跳ねるのも好きだし、そういった動きを駆使して戦えばより勝率があがる。しかも「アラートアーマー」のおかげで敵の攻撃を「各部位一度だけ」予測できるのもイイ。防御力は中の上だけど、この能力のおかげで急所の攻撃を避けることができるし、それ以外のカスダメは無視することもできる。マジサイコー。
というわけで、東京某所のこの大学とその周辺は私とそのパーティー「rabibt's killer」の狩り場となっているのだ。

「くそー、遠距離から狙撃させてその間をぬって攻撃してくるとか信じらんね~」
こらこら、中年差しかかりのおっさんが醜いぞ?。まぁ、他の面子には武器に課金を全振りさせてるから攻撃が正確なのも的確なのも当たり前。敵に照準を合わせるだけで追尾する超高額ミサイルとかも導入してるし、中途半端な課金額じゃ勝てない勝てない。
「いや、ほんと強いわ。今度のアイアン・バインド勝てるんじゃねぇか?」
「お褒めの言葉ありがと!」
褒めてくれるおじさんには投げキッスプレゼントしちゃうぞ!というか、私たちもアイアン・バインド狙いで機体狩ってるんだけどね。

アイアン・バインド
非公式のwikiサイト「Reality Steel」が毎月開催している大会。賞金額は参加グループ数によってまちまちだけど、だいたい100万はくだらない額がもらえる「目指すべき大会」だ。
私たちrabibt's killerは先々月の大会で地区予選を突破した。
のだが。
その直後によく分からない錆びた鋼鉄騎士の襲撃に会ってパーティー全滅。大会の参加を断念せざるを得ない損害を喰らってしまった。
いや、参加しようと思えばパパに頼んで課金してもらえばよかったんだけどね。流石に20万前に使ってたから借りれなかったんだ。
というわけで、今月の大会は絶対に勝つと決めてトックンしてる。ポイントも上手いけど、今は連携と技術を高めないと。
「じゃ、帰りますかね~」
「「「了解~」」」
耳のデバイスに撤収を指示。今日はファミレスで反省会だぞ。
「じゃ、おじさんたちまたね」

「でさ~、1発目のショットが相手が高機動過ぎて外れるんだよね」
「わかる~。だから最初をミサイルにしちゃえばいいんだよ」
「でもさ、それスゴイ金かかるよね?」
今日もファミレスで反省会。楽しい楽しい反省会は、いつもおなじみの駅前の24時間営業の店だ。
店の電源を使っていても怒らないし、何よりWiFiが早い。こういうところがもっと増えればいいなぁ。
「でも、今回の戦法は良かったよね」
私の言葉に、チーム全員が頷く。
今日は思ったよりも接近戦になった。互いの顔が見える状況で、相手の動きを察知しつつ動く。そういう戦い方は嫌いじゃない。
で、私が編み出したのは「相手のドローンの動きを見る」こと。これ、海外じゃ反則行為としても取られるかもなんだって。まぁばれなゃ大丈夫でしょ。
「いいね、ことみが至近距離で切り結んで、私たちが遠距離攻撃。相手も上手く削れてたし、イニシアチブも取れてた」
チームの一因の言葉に、私も大きく肯く。ようやくチームの士気も高まってきた。
「じゃあ、それでやってみよー!!」
私の大声に、矯声を上げるチームのみんな。
こういう、|友達(どれい)って大事だよねー。

「あれ、また誰か来てるよ」
外部リソースアプリを起動していたチームの一人が、声を上げたのはそれから何分経っただろうか。
チームの方針決定から恋バナに移り変わり、明日の講義だるいねーといいあってた時だ。
「また公園?」
「うん」
非公式の外部リソースアプリで起動している相手の位置と詳細を知った私は、顔をしかめた。
「この前のやつじゃん」
私たちを単機で倒した、ボーレイみたいな機体。初期キャラの機体なんて使って、恥ずかしくないの?ホントバカみたい。無課金勢なんて消えちゃえばいいのに。
「よっしゃ、新しい戦術で倒すぞ~!さっきの位置に展開して!!」
「「「了解!!」」」
軍隊みたく号令かけて、いそいそとレジに向かう私たち。お金を払って店を出ると、そとは少し寒かった。

────

「くそ、なんでだよ!!」
思わず、罵声が出た。
相手の赤さびた旧式の機体は、ことみの軌道に難なく追いつき正確な射撃──といっても弓なのだが──で後衛を潰していく。いつの間にか援護射撃はなくなり、私ひとりで敵と切り結んでいた。
「なんで私らの位置が分かるんだよ!!」
その動き、その射撃。どう考えても人間じゃない。切り結んで、数十秒でもう機体がボロボロ!!
「どういう攻撃力してんだよ……!!」
罵声。悲鳴。怒号。いろんな感情が混ざり合い、しかしそれが動きを鈍くする。
目の前の女子は無言で、こちらを攻撃を読み切る。かすりもしない高周波ブレードが、目の前で弾き飛んだ。
瞬間、敵の長刀が私の機体に突き刺さる。ぐ、とひねりを入れて突き刺された超党派、私の機体を壊すのに十分な威力を持っていた。

※Sesssion ended.
Session Recode ::No.0xB4C0FD8Ch.
Winner : XR001-C4RR "疾風"
Point : 130,234pt added.
Accounting : 0 Jp-yen.
Congratulations. It was a wonderful fight !
We are looking forward to your participation.

       Virtual Real Steel Administration Committee.

「ありがとう、ございました」
目の前の少女はそう言うと、そそくさとその場を離れていった。

※この短編の二次創作にかかる著作権者は華や式さまになります。

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