#001
魔王帝国の皇女、システィーナ16歳、素敵な街づくりを始めます

星歴1229年 8月17日 午後14時00分
魔王帝国 中央帝都 第一魔王城 大会議堂


〈ナレーション〉
 漆黒色のドレスをまとった少女は、付き従う獣人騎士団を振り返って、微笑んだ。
「行きましょう」
 少女と揃い<漆黒色の騎士服で身を包んだ、獣人たちが無言でうなずいた。

 魔王帝国は、魔族とその眷属からなる巨大な帝国である。
 かつて、始祖の魔王は、人類の国をひとつ制圧し、彼らの王都を奪い、魔王城とした。始まりの地、それが現在の中央帝都であり、第一魔王城である。

 その後も――
 魔王の子孫たちは、成人すると、新しい土地へ赴き、人類の王国を征服し新しい魔王城にした。魔族の国は、複数の魔王城を束ねた強大な魔王帝国へと発展した。
 
 中央帝都で育った少女もまた、十六歳の誕生日を迎えた。
 彼女もまた、新しい魔王城を手に入れるため、眷属たちを引き従えて、新しい土地へ旅立つ時が来た。


〈システィーナ〉
 舞台にあがる。私付き獣人騎士団の靴音が続く。大司祭様へ軽く会釈する。演台へ向かう。リハーサルどおりに歩む。
 演台に着き、居並ぶ魔族たち眷属たちの群れに、ゆっくりと一礼した。

「偉大なる魔王皇帝陛下の孫娘、システィーナ・イス・シクストゥス姫殿下は、十六歳になられた」
 大司祭様の低い声が、大会議堂に響き渡る。

「魔王皇帝陛下のご裁可が下りました。システィーナ姫殿下には、メイルラント地方六王国の制圧が命じられました」
 私は、キッと虚空というか、大会議堂の三階席の方向を見詰めていた。

「メイルラント六王国の制圧戦に際して、姫殿下の隷下へは、魔族兵団三千、眷属兵団九万七千、竜騎兵三百が与えられます」
 大会議堂がどよめいた。
 これは魔王帝国軍の全戦力のおよそ四分の一。近年にない規模の大遠征だった。お爺ちゃんじゃなくって…… 魔王皇帝陛下が、孫娘の私のこと可愛がってくれるのはありがたいけど、さすがに、こんな大軍団は大袈裟すぎるってば。

 この大遠征の前の大集会は、大司祭様が進行役となって仕切ってくれる。主役のはずの私は、少しだけ最後にご挨拶のセリフをしゃべるだけ。綺麗なドレス姿で突っ立っているだけ…… というシナリオになっていた。

 でも、それじゃあ、面白くないでしょ? ね?

「では、システィーナ姫殿下、来席の魔族諸侯並びに眷属の将兵らへ、宣誓を……」
 大司祭様のセリフが大会議堂へ響き渡る。三階席まで満席の大会議堂が静まり返る。

 さあ、シナリオを逸脱します。

「大司祭様、私からもお話をしてもよろしいでしょうか?」
 左手をすっと挙げた。

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